投稿日:2011年9月26日
9月に入ってようやく手術をスタートさせることができました。
連携病院から毎週木曜午後の手術枠を与えていただきましたが、すでに10月末まで毎週手術予定が入っていて、俄然気合いが入っているところです。
ー 何が何でも軌道に乗せねば。
9月8日の1例目がいきなり両側乳がん手術でしたが、順調に経過しホッとしました。
以後、これまで3名の手術を執刀させてもらいました。
先週手術した3人目の方は、89歳のKさん。
見た目は年齢相応のおばあちゃん(失礼)ですが、すごくしっかりされています。
腫瘍の周りに出血したことと年齢の割にお元気なことから、手術することになりました。
当日、50分ほどで手術は問題なく終了。
麻酔から醒めた直後のKさんの一言。
「先生、失敗しとらんね?」
「え?」
確かにはっきりと聞き取れる言葉でした。
長年外科医をやってきて、術直後に単刀直入にこんな質問を受けたのは、初めて。
手術室のスタッフも少々ビックリしていました。
ドキッとしながらも、まじめに答えました。
「いや、だいじょうぶ、ちゃんと言ってた通りの手術ができたよ」
ところが、よくよく聞いてみるとKさんの真意は異なりました。
「失敗」とはおシモの失敗のこと。
自分が意識のない術中におモラししていないかがとても気になっていたようです。
もちろん大丈夫だったのですが、それがわかるとようやく安心されたようでした。
手術室は一転、笑いに包まれました。
翌朝病室を訪れると、Kさんは一人で朝食の最中。
笑顔で迎えてくれて、手術を終えての一句まで詠んでくれました。
愛すべきおばあちゃんです。
手術をしない外科医は、陸の漁師と同じようなものだと思います。
漁師は海に、外科医は手術場にいてこそ。
しかし残念ながら、外科医が活躍できる場は年々狭まってきています。
望むと望まざるとに拘らず、メスを置いてしまった外科の同僚や後輩も少なくありません。
そんな中、手術を続けることができて、そして何より手術を通して患者さんと深く関わり合える機会をもうしばらく持てることを、恵まれていると感じています。
支持していただいた全ての方々に感謝しつつ、一例の失敗も無いよう細心の注意を払ってメスを握っていきたいと思います。
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