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ことだまの元

投稿日:2011年8月8日


クリニックの検査スペースに掛けられている一枚の絵。画家白木ゆりさんの銅版画です。

開業のお祝いにと、お世話になっているYさんご夫婦からいただきました。気に入っている作品だったので、すごく感激しました。

この作品を初めて観たとき、何か黄色い物体が産まれ出てきているみたいだと感じました。

気になりタイトルを見ると「ことだまの元」

そこでまた、ホォっと得心した気分になりました。

発せられた言葉に宿っていた何ものかが、光を放ち、膨み始めて、今まさに殻を破ろうとしている。自分なりにそんな風に解釈しました。

一枚の絵画は千の言葉を語ると言います。

白木さんの意図とはズレているかも知れませんが、こんな見方があっても良いでしょう。


自らの言葉(存在?)の軽さに耐えられないという現実は置いといて、逆に、他人から発せられた言葉が時間を経ても自分に影響を与え続けるということは時に経験します。

今回の開業に際して、僕に前進の勇気を与えてくれた「ことだま」があります。


「ハマちゃん、まじめにやっていれば、きっといつか誰かが救ってくれるよ。」

昨年6月、先が見えない状況に陥っていたときに、かつての上司だった先生が僕にかけてくれた言葉です。事態が進展するとともに、言葉の重みが増していきました。この言葉が励みになり、自分が信じる診療や啓発活動を続けることができたと感謝しています。


「医者は、患者さんの方だけ向いとけばヨカとさ。患者さんがついてきてくれれば、それだけでやっていける。」

昨年末、進路について迷っているとき、昔から面倒を見てくださっている先生がボソッと呟いた言葉。自分が置かれる状況のことばかり考え、大事にすべきもの、進むべき方向性を完全に見失っていました。この言葉で吹っ切れて、開業する決心がつきました。


お二人にどこまでの意図があったかはわかりません。しかし、二つの言葉は間違いなく僕に力をくれました。今でも僕の中のどこかで光を放ち続け、時折耳元でリフレインされて、勇気を与えてくれます。


言葉に宿る力。ことだま。


ネガティブな言葉を吐くことは、 実にたやすいことです。

ポジティブな力をもたらす言葉を、いつか他の人にもかけられるようになりたいと、この絵を観るたびに思います。


もうすぐお盆だからという訳ではありませんが、「ひとだま」ならぬ「ことだま」の話題でした。

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